
フェラーリ セミナー備忘録(シリル・ブラン氏講演要点)
1. シリル・ブラン氏について
- シャンパーニュで約25年間(ヴーヴ・クリコなど)醸造に従事。
- 2023年にフェラーリ(トレントDOC)のワインメーカーに就任。
- フェラーリを選んだ理由は、「トレンティーノの山岳テロワール」と「フレッシュさ・純粋さ・垂直的な酸(Verticality)」に魅了されたため。
2. トレンティーノのテロワール
シャンパーニュとの違い
- シャンパーニュ:土壌(チョーク=白亜質)が複雑さを生む。
- トレンティーノ:複雑さは土壌ではなく、マイクロクライメート(微気候)から生まれる。
主な要因
- 標高250~700m
- 山岳地帯
- 谷の位置
- 湖の影響
- 風
- 昼夜の寒暖差
山岳地帯最大のメリット
山のバッファ効果によって
- ブドウがゆっくり成熟する
- 酸が保たれる
- フレッシュさが維持される
- 温暖化の影響を受けにくい
3. フェラーリの畑
- 全畑100%オーガニック認証
- 乾燥した冷涼気候で病害が少ない
- 約95%がシャルドネ
- 約5%がピノ・ノワール
ペルゴラ仕立て
- 日照を十分受ける
- 果実が均一に成熟
- 収穫しやすい
4. コカール社最新プレス機導入
目的は
収量アップではなく品質向上。
特徴
- 圧力をより精密にコントロール
- 果皮・種から不要成分を抽出しない
- デポジット(沈殿物)が大幅に少ない
- 非常に透明感のある果汁
シリル氏の言葉
「良いブドウを正しく搾れば、その後に修正する必要はない。」
5. フェラーリ・ブリュット
- 100%シャルドネ
- ブラン・ド・ブラン
- ステンレスタンク発酵
- マロラクティック発酵もステンレス
- 一次発酵とMLFの間はラックキング(澱引き)しない
ブレンドに使う標高
約400m
理由
- 長期熟成に必要な酸を確保できるため
6. リザーブワイン
シャンパーニュ
→ ヴィンテージ差を補正
フェラーリ
→ ヴィンテージ差補正ではない
目的
- クリーミーさ
- テクスチャー
- 複雑さ
7. ドサージュ
シリル氏の考え
重要なのは
糖分量ではなくリキュールの中身。
40年前
12〜15g/L
↓
現在
糖分量は減少
↓
その分
リキュールを構成するワインの役割が非常に重要になった。
ドサージュ量
Brut・Maximum
約6〜7g/L
Blanc
約4〜5g/L
Rosé・Giulio
さらに約2g少ない
8. 熟成ワインとドサージュ
古いヴィンテージで
0g
1g
2g
3g
を比較。
毎回
ゼロ・ドサージュが最下位。
理由
- バランスを失う
- デゴルジュマン後の酸化ショックを補えない
シリル氏
「少量の糖分はワインにとってFuel(燃料)、Energy(エネルギー)」
9. フェラーリ・ロゼ
構成
約2/3 ピノ・ノワール
約1/3 シャルドネ
ピノ・ノワールの半分
→ ブラン・ド・ノワール
残り半分
→ 約10〜12時間マセレーション
特徴
- 淡い色調
- 繊細なタンニン
- フレッシュな赤系果実
現在
ブルゴーニュ・ジュラ地方から新しいクローンを導入し研究中。
10. リゼルヴァ・ルネッリ
2002年初ヴィンテージ
100周年記念キュヴェ
特徴
オーストリア
ストッキンガー社製大型樽
樽の目的
- 樽香ではない
- 複雑さ
- トースト
- スモーキーさ
- バニラ
- スパイス
樽熟成するワイン
最も酸が高いロット
理由
樽熟成でワインが柔らかくなるため。
11. ストッキンガー樽
40基所有
非常に入手困難
シリル氏
「ロレックスを買う方が、この樽を買うより簡単。」
12. ジュリオ・フェラーリ
正式名称
Giulio Ferrari Riserva del Fondatore
最も簡単に造れるワイン
理由
醸造は非常にシンプル
- ステンレスタンク
- 還元的醸造
品質は
畑が決める。
使用畑
Maso Pianizza
特徴
- 西向き斜面
- 午後の日照
- 独自の成熟
13. チョーキーという表現
シリル氏
昔は
“Chalky”
と書いてしまった。
しかし
トレントには
チョーク土壌は存在しない。
現在は
“Minerality”
という表現を使用。
14. ジュリオは毎年造らない
品質が十分でない年は造らない。
見送った年
- 2013
- 2014
15. AI活用
大学
- ウディネ大学
- パドヴァ大学
と共同研究。
目的
AIが作るブレンド
vs
人間が作るブレンド
を比較し
新しい視点を得ること。
16. 将来のプロジェクト
- リザーブワイン専用セラー建設
- 約12,000hL増設
- データベース構築
- AI活用
- 標高の高い新しい畑の開拓
- 温暖化への対応
一番印象に残ったシリル氏の言葉
「品質は、後から直すものではない。最初の工程ですべてが決まる。」
「山のバッファ効果が、フェラーリのフレッシュさと垂直的な酸を生み出している。」
「少量の糖分は、ワインにとって燃料(Fuel)、エネルギー(Energy)である。」
「ジュリオ・フェラーリは醸造技術ではなく、畑が造るワインである。」
「ロレックスを買う方が、ストッキンガーの樽を買うより簡単だ。」
この5つは、今回のセミナー全体を象徴するキーワードとして特に印象に残りました。