旧世界のワイン産地の変革 Champagne❷

2024/07/22

旧世界のワイン産地の変革champagne 2

フランス:HVE(環境価値重視認定) 

基準が厳格化(サスティナブルな認証)

フランス農業・食糧省が管轄する環境認証マークHVE(環境価値重視認定)の基準が、2023年1月から一部改訂された。全般的に厳しくなり、ぶどう栽培農家には、懸念が広がっている。

HVE[Haut Valeur Environnementale:環境価値重視認定]は、フランスの官民の関係者が一同に集まって環境問題を大議論した環境グルネル会議で提唱され、

❶フランス農業・食糧省が2012年に制定した、レベル13までの3段階の環境認証のうち、最もハイレベルのレベル3の認証である。
農場に対して与えられる認証

❷フランスの農業全般を対象としているが、ぶどう栽培がけん引している。生物多様性の維持、殺菌・殺虫剤の使用削減、施肥の管理、灌漑の管理の4つの分野が評価対象で、独立機関が監査を行い、規定の達成度合いをポイントで評価し、各分野で10ポイント以上に達した場合に認証が与えられる。31サイクルで、個別認証のほか、団体認証での取得も可能。

フランス農業・食糧省の発表によると、202271日現在で、29,898軒の農家がHVEの認証を取得している。2021年の7月時点から約10,000軒増え、取得軒数は一年で56%増となった。
29,898
軒という数字は、フランスのすべての農家の約7.7%で、取得した農地面積は、156haで、フランスの有効農地面積の約5.8%にあたる。
ぶどう栽培農家がHVEの取得をけん引していて、その取得軒数は202271日現在で、20, 326軒ともっとも多いが、他の農業分野でも取得が進んできたので、HVE取得農家軒数全体に占めるぶどう栽培農家の割合は、20186月の93%から、20227月は70%を切るまでに下がっている。

このHVEの基準が、20221118日付のアレテ(省令)で変更され、その新基準が、202311日付で発効となった。

[20231月からの変更点と懸念]
1)    
オプションBの廃止
これまでHVEの取得には2つのオプションがあった。オプションAは、上述のとおり、生物多様性の維持、殺菌・殺虫剤の使用削減、施肥の管理、灌漑の管理の4つの各分野について、規定の達成度合いについて10ポイント以上をそれぞれ達成しなければならない。

もう一つのオプションBは、簡易的に取得する方法で、(1) 農家の総売り上げに占める投入物(殺菌・殺虫剤や肥料など)の割合が30%以下 (2)生垣や林などのアグロエコロジーのインフラを、有効農地面積の10%以上 の2点だけをクリアするものである。このオプションBは、特にぶどう栽培では売上金額が他の作物より多いので、投入物の割合は30%以下となっている現状が多く、なんら手法を変更していないままHVEを取得できてしまうなど批判の対象となっていた。今回、このオプションBの簡易的な取得を廃止することは、ぶどう栽培者からも歓迎の声があがっている。

2)     オプションA 評価基準の変更
オプションAでは、生物多様性の維持、殺菌・殺虫剤の使用削減、施肥の管理について、規定が増えたり、評価基準が変更された。

例えば、生物多様性の維持では、これまでは生垣などのアグロエコロジーのインフラを、有効農地面積の9%以上整えているだけで、認証に必要な10ポイントを獲得することができたが、今後は、アグロエコロジーのインフラの整備は、最大で7ポイントとなり、あと3ポイントは、ミツバチの巣を用意する、土壌の微生物を調査するなどの他の手法を組み合わせなければならない。

殺菌・殺虫剤の使用削減では、CMR物質(発ガン性、変異原性、生殖毒性があるとされる物質)で、EUの分類でカテゴリー1に分類されている物質を含む薬剤を使用した場合は、0ポイントとなることなどが新たに明記された。
また、農薬使用量をモニターする指標であるIFT(処理頻度指数)が、基準のIFTを下回っていれば、その度合いにより最大5ポイントを得られ、逆に上回ればポイントは取れない。この基準のIFTの設定が、場所によっては、これまでの基準の半分以下に変更された。この結果、現状では基準のIFTを上回ってしまい、ポイントを得られないというケースが多く発生することが懸念される。
さらに、カバークロップの割合に応じてポイントが配分されているが、これまでは、最低でも有効農地面積の25%を超えてカバークロップが植えられていればポイントが得られたが、今後は50%以上植えてないとポイントは得られない。

施肥の管理については、窒素収支で、これまでは残存する窒素量が、1haあたり60kgを超えるとポイントを取れなかったが、今後は1haあたり50kgを超えると0ポイントとなる。また、これまでは、1haあたり40kg以下の窒素で10ポイントを獲得できたが、今後は、1haあたり20kg以下の窒素でポイントが最大となるものの、8ポイントで、残る2ポイントは、肥料を与えない面積や、カバークロップなど他の手法で対応しなければならない。

[変更の背景]
そもそも2012年の制定から10年が経ち、その間に農業技術もいろいろと発展してきているので、基準を見直して厳しくしなければならないという考えをフランス農業・食糧省は持っていた。
しかし、見直しを加速させたのは、2023-2027年の次期CAP(欧州共通農業政策)で、「エコ・スキーム」の導入が義務付けられたことである。「エコ・スキーム」は、環境や生態系に配慮した農業を実施する農業者を支援するために、支援金を支払うものである。
フランスは、環境認証の取得を、「エコ・スキーム」の支援金を得る3つの方法の一つとした。この環境認証の取得で、HVEを、支援金を申請できる対象の一つの認証とした。これに伴い、2021年からHVEの基準の見直し作業に着手していた。
言い換えれば、HVEを取得すれば、「エコ・スキーム」の支援金を受ける対象となる。すでにHVEを取得している農家については、新基準への移行期間として、20241231日までに、新基準でのHVEを更新すればよいという。

[変更の影響]
新たな基準が厳しく、複雑になるということで、ぶどう栽培農家も反応が複雑なようである。

AOCボルドー、ボルドー・シュペリュールのODG(保護団体)のステファン・ガバール会長は、これまで評価していたことのポイントを下げるなど、一貫性のなさが多く、農家はHVEを取ろうという気持ちにならないのではないかと指摘する。例えば生物多様性で、生垣などのインフラの評価点数が下がったことが一例で、生垣を推進するボルドーの活動とも整合性が取れない。

また同じくボルドーのAOCコート・ド・ブールのODGは、HVEの取得を、AOCの仕様書の規定の中で義務付けることを計画していたが頓挫した。規定が厳しくなり、生産者に取得を義務づけるのは難しいと判断したという。

さらに、団体認証の場合、今後は毎年、すべての農家の現場の監査が義務付けられるという。これまでは、3年間で1サイクルのHVEについて、期間中の監査は、書類で終えることも可能であった。時間も費用もこれまで以上にかかるということになる。

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